石徹白!貸切の陣

ひげオンジ

2011年07月06日 01:51

7月5日、朝4時。いそいそ、いそいそ・・と起きだしていきなりのお目覚めシャワーなどを浴びているこのひげオヤジには、きっと何か魂胆が・・・。

 などとあれこれ詮索する間もあればこそ、蒲団の上で、奥方がグースカピースカ、寝息を立てている間に、とっとと着替えを済まして、抜き足差し足、音もなく玄関をスルリンと抜け出しているのは、けっしてやましいことをしている訳でもないのだが、やはりこういう習慣がすっかり身に付いてしまっているのがなぜか悲しい。とまぁ、少し涙目になりつつも、何せ久方ぶりの渓流釣行。この1ヶ月あまりまともに休みの日に限って、大雨!ということもあり、二度ほど管釣りでお茶を濁していただけ。

 それでも止まない雨はなく、明けない夜はない!というがごとく、ようやく取れたお天気の休日。胸中に去来するのは、ただただ、「打倒石徹白イワナ!」の文字のみ。そんなはやる心を抑えつつ、愛車はいつものごとく高速道路を東へ北へ。お馴染みとなった流れを目指して一直線にひた走っていく。

 さて梅雨の真っ最中の今日。気になるのは天気予報の方だが、幸いなことに今日一日、岐阜の飛騨方面は雨に降られる心配はない様子。とはいえ、昨夜来の雨に濡れた道路を走りつつおれば、その目的地への不安は募る。白鳥ICを降り、国道156線を走っていくが、右手に流れる長良川の本流も、

 ダダ濁り!(>_<)
 
という有様。果たして石徹白はいかがなものかと、不安に脅えつつ、ウンサカホイサカ峠を越えて、いつものスキー場下に車をおけば、

やっぱ増水!(T_T)





おまけにしっかり濁りまで入っているのを見れば、せっかくのファイティング・スピリットも、シュルルルル~と穴の開いた風船もかくやと言わんばかりにしぼんでいく。

 これじゃ、『スキー場下銀座通り』は無理か・・・

と思い、再度、車に乗り込みC&R最下流を目指す。「下流部なら、川に立ち込まなくても、流れ右手の護岸沿いに歩けば釣れるはず」という目論見であったが、なんとその護岸は全て、生い茂る

 熊笹・・・

に埋め尽くされて、とても歩いて行ける余地などない。それじゃ、広河原の左手護岸沿いにとも思ったが、そこには先行するルアー師2名のお姿が見えている。さきほど垣間見た本流との合流点も、左からの流れから濁った重い水が滝のごとくあふれかえっている。当然、本流もひどいことになっているはず。

 さてさてどうしたものでせうか・・・(=_=)

 再度スキー場下の駐車場に戻り、無い知恵を絞ってみるが、当然、石徹白以外のどの川も同じ状況のはず。となれば先ずは通い慣れたこの流れなら、何とか心配事もなく釣りになる。また水が引くのも早いこの流れ。午後になればきっと状況はグンと良くなる・・はず、と考えた結果、先ずはユルユルとタックルのセットアップ。まま、これまでどんなひどい状況下でも、それなりに小生を慰めてきてくれたこの流れ。先ずは駐車場より少し下手の護岸を滑り降り、本日の第一投と相成る次第。さてさてどうなりますことやら。

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 太く濁った流心を避け、いつもなら歩いて通り過ぎる石裏の浅い流れにキャストしつつ、釣り上がること30分。ここまでまったくの反応もなく「うーん、やっぱダメかぁ・・・」とため息混じりフライを流しておれば、すでに駐車場下のプールにまで来ている。あまり期待もないまま、護岸脇の速い流れから少し外れた浅場を流してみれば、スーッと一尾の魚がフライを見に来る。その魚体がフライの少し手前でUターンするのを見れば、「そっかぁ、ドライではちょっと厳しいのか・・」と考え、たぐり寄せたティペットの先には夏の石徹白定番となる

インチワーム!




を括り付ける。「えーっ、こんなハイシーズンにドライを使わず、フライを沈めるの?」というご批判が四方八方から聞こえてくるが、そんなことは委細かまわないのがこのひげオヤジ流。釣れるのならどんな手段でも厭うことなく選んでみせる。となれば、諸君!今日この日から、

 「卑怯」と書いて「ひげオヤジ」

と読むようにしましょうね。(ただし受験を前にした中高生諸君はダメですよ。判りましたね・・)

 さてこのインチワーム。少し水になじませた後、キャストしてみれば、すぐさま一尾の魚が追いかけてくる。が追いつく前に速い流れに取られてしまいそれはノーヒット。それなら・・と思いさらに上手に投げ、水面下20センチほどの所を流してみれば、岩陰から飛び出してきたお茶目な魚が黄色いフライを横ぐわえするのが目に入った。「それっ!」とロッドを立てれば、重くはないが流れの中を右往左往しつつ、ヒュンヒュンとロッドをしならせてくれる。「ああ良かった、ボ☆ズじゃなくて。」と安堵のため息を深く深く吐きつつもネットインしたのは20センチあるかなしかという、


思いっきりな脱走アマゴ(-_-;)





「うーん、なんだかな・・・」と嬉しさ半分、寂しさ半分の微妙な気持ちで先ずは元の流れへと、ユルユルとリリースしてあげる。さて、その後も同じプールで2尾の脱走アマゴを釣り上げ、さらに上流へと前進しようと試みたが、いつもの足場までもが重い流れの下に沈んでいるのを見れば、すぐさま退散。いったん駐車場に戻った後、何とか竿を出せる所はないかと銀座通りを流れに沿って歩いていく。歩くこと5分でいつもの『お気楽プール』前に。除草のされていないこの時期の石徹白。かろうじて残る踏み跡を頼りに流れに立てば何とかキャストできるスペースがある。そしてこのプールでも脱走アマゴを一尾追加。



今年、やたら目につく脱走アマゴ。
増水をよいことに、あのアマゴ園から脱走してきたのか?


やっぱこれだけ流れが速いと釣れる層に出てくるのはアマゴばかりなのかと観念しつつ、「あー、イワナが釣りたい、イワナが!」とさっきまでボ☆ズの恐怖におののいていたことなど、すっかり忘れているのがこのひげオヤジ流。となれば、諸君!今日この日から、

 「我儘気儘」と書いて「ひげオヤジ」

と読むようにしましょうね。(ただし受験を前にした中高生諸君はさらにダメですよ。判りましたね・・)

 さて、プールで散々投げ散らかした後は、再度、熊笹かき分け脱渓。他にも竿を出せる所はないかと思案しつつ、歩くことまた5分。道端に立つ一本の杉の木の姿が目に入る。

「そうそう、この木の脇からいつもアマゴ園下プールに入渓していたんだ」

ということをふと思い出す。目の前には熊笹が生い茂っているが、確かこの木のすぐ脇が川面で、降りた所には足場になる大きな石があったはず。「よぉし、それじゃあ」と気持ちも新たに、木の横に生える熊笹目がけて足を踏み入れてみれば、

あ~れ~~(@_@)

本来なら地面につくはずの足が空を切ったかと思うと、体は左前方へと大きく傾いていく。「そうだ、ここは50cm!ほど段差があったんだ」と思い出すのは今は遅く、体は熊笹の中へとなだれ込んでいく。「やばいなぁ」と頭は妙に冷めているが自分でも不思議であり、さらにこういう危機的状況になった時には、「流れに身を任す」というのが実はこのひげオヤジの得意技。竿を胸に抱いたまま、なすすべもなく倒れ込めば、幸い茂った熊笹が二重三重のクッションとなってくれ、このポンコツボディに、大きなダメージを受けることもなかったはこれ幸い。(ちなみにロッドも無事であったが、フライベストの背中のメッシュが敗れてしまった・・とはいえ、被害は軽微。良かった良かった)

 「これが若い時なら、無理に体を支えようと変に腕をついたりして、余計な怪我をしていたのであろうな・・」

などと己の不注意を顧みることもなく、自画自賛しているのだから、まったくもってこのひげオヤジに付ける薬はない。こうなったら、諸君!今日この日から、

 「傲岸不遜」と書いて「ひげオヤジ」

と読むようにしましょうね。(受験を前にした中高生諸君、「ごうがんふそん」という正しい読み方が判りましたか・・?)

 さて、そのまま来た道に戻るかといえば、それはもう全くもって懲りないこのオヤジ。先ずは流れはすぐそこと思い、さらに熊笹をかき分け、見える水面に降り立ってみると、なんとまぁ、再度予想は裏切られ、足場となる石もなければ、浅くもない。腰から下をしっかりと包み込む滔々と流れる濁流のみがそこにあった。その重い水圧の前に、「進退窮まる」という事態になるが、ふと前の流れを見れば、大岩の裏のタルミに、何尾もの魚影が見える。
 「うーん、そういう場合ではないんだが・・」と一人ぼやきつつも、流されぬよう土手の熊笹を右手にしつつ、空いた左手でロールキャスト。3メートルほどのキャストだが、流れにインチワームが届くやいなや、

 バシャン!

という飛沫が上がる。思わず、ロッドを立てれば激流の中からアマゴのキラキラした魚体が浮かび上がってくる。何とか手元までたぐり寄せ。ロッドを口にくわえた格好で(右手は当然、流されぬよう、必死で熊笹を握っておるのです)なんとか左手一本でその魚をリリース。

 「うーん、別にここまでして釣らなくても良いんだよね・・」と一人ごちつつも、再度、正面の流れを見れば、なんと良形のアマゴがライズまでしているではないか!ということで、左手一本のロールキャストを繰り返すこと数度。良形はアワセ損ねたものの、22cmほどのアマゴを一本追加した後、ほうほうの体で土手へと待避する。

「うーん、自分でも自分のことをバカだとは思っていたが、まさかここまでバカとは思いもしなかった、ですね・・(~o~)」

というのが今、この記事を書きつつ考えること。本当に年甲斐もなく無茶は止めましょうね。




アマゴ園下の大プールもこんな具合の大濁流。
もしかするとこの50メートル下流に「ひげオヤジの溺死体」が浮かんでいたかも知れません


 さて、脱渓後はおとなしくアマゴ園まで歩き、アマゴ園横の流れだしの脇にある護岸から再度入渓。どれほど増水しても深いプールがすぐ傍にあるこの場所だけは、乾いた所が残っているからありがたい。流れを見れば、プールの肩には何尾かの魚影が見えたりする。
 先ずは流れを大きく迂回するようにプール下手に降り立ち、ティペットを交換。よぉし今度こそと思い、再びドライフライを結び、先ずはプール脇の緩い流れにキャスト開始。ドラグがかかりそうでかからない、そんな微妙な感じで、流心のすぐ横をフライが流れていけば、バシャン!と小気味の良いアタリがあって、再度20cm足らずの脱走アマゴが釣れてくる。同じポイントをしつこく攻めて、さらにアマゴを一本追加した後、またバシャンというアタリがある。スンと竿を立てれば、今度はグリグリグリグリという、お馴染みともなる重たい動きが掌を震わせる。ということで、本日の

石徹白イワナ第1号





のご登場と相成った。

 それから後も別荘下のプールで22cmのイワナを釣り上げた後、さすがに遡行は無理と断念し、駐車場まで戻ることに。そのまま、昼食と思いきや、再度、悪しつこく朝一番の流れにフライを流し、25cmの

本物石徹白イワナ!




とご対面。流れの中を二転三転する重い魚体をあしらいつつネットインすれば、「いやぁ、やっぱ石徹白は良いなぁ!」と感激することしきり。たくさんの心優しい人に守られてきたこの流れ。どこまでもどこまでも愛すべき存在なのであります。

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 「そうかそうか、午前はアマゴ7尾にイワナ3尾。先ずはツ抜けのノルマ達成!(^_^)v」

 午前最終、脱渓直前に、もう一尾のイワナを追加した小生。先ずは押さえても押さえきれぬ微笑みを噛み殺しつつ、さてさて午後はどうしましょう・・? と少ない脳みそをフル回転しつつ、コーヒーなぞをグビリと飲みつつ目の前の流れを見れば、朝一番よりは水位も下がり、ずいぶん水色も良くなってきたように思う。「ん、なら、上流部でも釣りになるか」と考え、車を駆って、C&R上流部を目指す。入渓直後、インチワームでイワナ一尾を引きずり出すが、やはり水量は未だ多く、ポイントらしいポイントもなければ遡行そのものも困難を極める。



増水中の上流部。どこにフライを落として良いやら・・・


 「うーん、これじゃダメ!」と1時間もせぬうちに脱渓し、今度はキャンプ場下の大河原へと転進。しかしここも分厚い流れに、いつもの岩裏のポイントなどが全滅!護岸脇の緩い流れなどを丁寧に探ってみるが、いっかな反応がない。結局、そのまま、四回あったアタリも空振りに終わった後、悲嘆にくれつつ、堰堤上の大プールにて脱渓。
 ため息混じりに時計を見れば、もう午後四時の少し前。それなりに好調だった午前のことを思えば、悲しいこと限りがなく、気がつけばスタートラインとなったスキー場下の駐車場に戻っている。
 いつになく広く感じるこの駐車場。それもそのはず、この場所に駐車されているのは、なんと、小生の車一台ぽっきり。まさに今日この日

 貸切状態!

の石徹白(ちなみに午前中、出会ったルアー師以外、どこもかしこも、釣り人の影のまったくない今日の石徹白なのでありました)ではあるのだが、戦果がそれに伴わない。

 「うーん、さてさて(=_=)」

 ゆっくりとタバコなぞくゆらしながら、先ずはここまでの午後の釣りを一人反省してみれば、気がつくことが二つあった。

1・・流心の脇やら、タルミには、間違いなく魚は付いて、何かを食っている

2・・しかしフライにドラグが掛かっているのか、それとも魚がティペットを見切っているのか、出るけどのらない

ということをひとしきり考えた後、小生の出した結論とは、

 そうだ、ティペットを9Xにしよう!

ということ。「えーっ、こんなハイシーズンに9X?」というご批判があの4Xでさえ平気でアワセ切れをするという恩師sinzan公や、「5Xでないと釣った気がしないよね」という源流師hajihadu大将の声となって四方八方から聞こえてくるが、

 漢(おとこ)の釣り!

などにはまったくこだわりもなければプライドもないのがこのひげオヤジ流。となれば、諸君!今日この日から、

 「因循姑息」と書いて「ひげオヤジ」

と読むようにしましょうね。(受験を前にした中高生諸君。これが「いんじゅんこそく」と読めないようではこの春が心配ですね・・)

 さてそれまで使っていた7Xのティペットを詰め、フロロの9Xを1メートルほど伸ばしたLLシステム(といっても12ftあるかなしかというのはご容赦下さいね)へと変更し、今日、三度目の正直と民宿横の護岸から駐車場下のプールに向かって入渓。フライはパラアントの14番をチョイスして、緩い流れをキャストしてみれば、その三投目で、バシャンという飛沫ともに22cmほどのイワナが釣れてきた。それも午前とはうって変わって、「モッサリ」というゆっくりとした動作でフライをくわえ込んでいくというのは、やはり細ティペットの効果なのであろう。さてさて、それから1時間あまりのことではあるが、そこはまさに、

貸切石徹白パラダイス!!(^^)!





ということに相成ってしまう。途中、細いアマゴを1尾交えつつ、4時半から5時40分までの短い時間、あっという間にイワナ7尾!をリリースする。先ほどの22cmの次は

24cm・・





26cm・・





28cm・・





とまぁ、『だんだん良くなる法華の太鼓!』というのはこういうことを言うのでしょう。特に9Xで釣り上げた28cm。太い流れの中で東奔西走する魚に対し、ロッドの能力を限界に感じつつ、ようやくネットインした時には、久方ぶりに

 「捕ったどぉぉおおおお!」

と絶叫した次第。これほどスリリングで緊張した瞬間が欲しくて、このひげオヤジは「釣り」などというおバカな道楽に日々汗しているのですね。

 さてその後も、さらに28cmをもう一尾追加し、仕上げにはスリムな放流アマゴを釣り上げた所で、本日は終了。このままイブニングも・・というスケベ心もない訳ではなかったが、「明るいうちに高速道路にのる」というのが、ここ石徹白でのマイルール。先ずは午前午後あわせて、

 アマゴ9尾、イワナ10尾!(^_^)v

という好結果に終われば何の不満もないことは言うまでもなし。ああ、本当にこんな良い日もあるんだ。

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 さて自宅に向かいハンドルを握るひげオヤジ。フロントグラス越しに見える空は、まさに、

ターナーの描いた夕焼け・・・




のように見える。もちろんその夕焼けを見ている瞳はどこまでもどこまでもほくそ笑んでいることは言うまでもない。いやはや、石徹白C&Rを今日まさに完全制覇!したような気分でいる小生。となれば、諸君!今日この日から、

 「天上天下唯我独尊」と書いて「ひげオヤジ」

と読むようにしましょうね。(うーん、さすがにここまでくると受験を前に冷や汗かきまくった中高生の頃を思い出す・・・)

2011/0706


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