安曇野塾…実習編

ひげオンジ

2007年12月25日 08:16

12月24日、朝6時。

 携帯のアラームで目覚め、窓の外を見れば、そこは、

 一面の銀世界!

 そう今日の朝は、ここ信州安曇野で迎えているのだ。当初は日帰りの予定だった「安曇野忘年会」であったが、我が奥方からは「帰りは疲れて運転が心配、だから一泊してきたら…。」という、

今年も実はやっちまいました(昨年12月23日付けの小生の記事を参照のこと)
ティファニー社製金のクリスマスボム!

のおかげによる優しいお許しもあって、一泊二日の大名旅行ということに。宿泊場所に選んだのは、「ごほーでん」という安曇野FCのすぐ向かい(釣り場まで徒歩で2分、車では前の道が混んで出にくいので3分…という逆転現象が起きるので注意のこと)、夏にはあの「@すばる夫妻(ということは当然、日本一のFF美人妻のhana殿も…)」が宿泊されたという、由緒ある宿。ちなみに幾つもの宿泊棟に分かれているこの宿の、小生があてがわれたのはA棟と呼ばれる一角。和風民芸調の建物に一歩足を踏み込んでみれば、何とそこには、天然のポーラーベアー

 塊(かたまり)…



で置いてある。今やワシントン条約最大級となったこのマテリアル。この毛をゴソっとむしってsinzan殿を始め、多くのFF仲間の方々にクリスマスのプレゼントとすれば、この悪党ひげオヤジも、一気の

 好感度アップ間違いなし!

という所だが、さすがにこの雪国の留置場は寒く冷たいはず。そんな所でこの年の瀬を過ごすこともできないと思えば、先ずは見なかったふりをして通り過ぎることにする。




 さてさて朝飯もそこそこに、6時50分には雪で白くなった駐車場から、車で3分という道のりを超え、昨日同様、安曇野FCの駐車場へ。営業開始3分前という人っ子一人いない池の様子を覗いてみれば、幸いそれほどの積雪もなく(やっぱり水温が高いことにより、若干周囲の気温も高いのであろう)水面からはじんわりと靄(もや)が立ちこめている。受け付けの方にはすでに灯りが灯っているので、すかさず昨日の「豚汁オバちゃま」にご挨拶しつつ入漁料を払う。本当なら「今日もまる一日」と思う所だが、午後からは地元での雑用などもあり、10時過ぎには釣りを終え、帰路に着かねばならぬため渋々の「半日券(一日券4000円と較べ、3000円…ってのは少し高いか?)」にてご様子を伺う。ちなみにこのオバちゃま。昨日も小生がこの釣り場にいたことなど一切記憶がないようで、「もし全部リリースでしたら、帰りにこの券と飲み物を交換…」という前日お伺いしたのと全く同じコメントを繰り返される。となればこちらも思わず意地になって、「へぇー、そうなんですか。それはそれは、生まれて初めてお伺いする素晴らしいサービスですねぇ。」とわざとらしく受け答え。

 記憶力に問題のある中年婦人vs性格に問題のある馬鹿釣り師

はまさに宿命のライバルと言って良いのだ。

 さて当然の如く、釣り場には一番乗り。すぐ後に受付を済まされたルアー師お二人の鼻っ面を叩くように、一目散に釣り場に急ぐ。先ずはhajihadu公ご推薦の、

 (事務所から見て)左流れ込み前

という第1級ポイントを押さえんがための加速装置オンのサイボーグ009的行動に出ることこそ、小生に課せられた義務に他ならない。「それほどまでになぜ…?」という向きもあろうが実は小生、この安曇野FCでは、

 一度も100尾以上釣ってない!

という厳然たる事実があるのだ。「夏釣行」の時には遅出の上に、途中退席などもあり88尾の結果に終わり、昨日もあれやこれやのお仲間との談笑を楽しみつつおれば、80尾止まりの結果(その変わりに型揃いではあったが)に終わっている。「う~ん、これでは安曇野の真価は語れないなぁ…」という憤懣たる思いが、実はその時まで胸を暗い影を落としていたことは言うまでない。とはいえ今日は朝7時から10時までの3時間釣行での

 100尾挑戦!

となればそれなりの決心と覚悟は必要。という知らぬ他人が聞けば「ただの馬鹿…」というほどの悲愴な決意に胸の高鳴りを押さえることのできぬ愛くるしい50歳とは、このひげオヤジに他ならない。

 さて、先ずは誰よりも先に、流れ込みの際に椅子を置き、心せかるるままにタックルのセット。今日は迷うことなく朝一番からのルースニング。ティペットの先には昨日比較的成績の良かったチーズカラーのBHタコ(サイズは14番)を結んでの第1投。この時、時計は7時4分。先ずはフライを水になじませようと軽くロッドをあおれば、

 クイン!

とマーカーが横走り。すかさず手首を返してロッドを立てれば、グルングルンとあの特有の首振りファイトで25センチ塩焼き級という岩魚をすかさずネットイン。その口唇からフライを外すや、すかさず次のキャスト(距離はフライラインで竿一本というショートキャスト)。目はマーカーを追いつつ、右手でネットを水中でのゆすりつつのリリースを行う…という、「完全数釣り戦闘モード」に突入する。

 投げる~合わせる~ネットイン~フック外す~投げる~リリース~合わせる~…

という一連の作業を円滑に円滑に行い続けない限り、

 3時間で100匹!

ということは不可能に近いことが、この馬鹿オヤジには判っているからだ。この時最大の敵は「フライを飲まれること」「大物を掛けること」の2点。先ず一つ目の課題はインジケーター(小生が多用するのはTIEMCO社製のシールタイプ。少し視認性が落ちるが、ティペットを傷つけないという点が最大の魅力。大物の混じる管釣りではこれはけっこう大きいポイント)をギリギリの浮力に保つこと。それで少しのアタリも見逃さないようにすればそれほど飲まれずに済む。二つ目の課題はこの流れ込みが解決。流れ込みの流水に集まるのは小型の岩魚(これはより冷水を好む)と何度か釣り人の針を経験した後、体力回復を専念する大型マス等が中心。となれば、釣れてくるのは、小型岩魚:中型ニジマスの比率8:2という割合になる。となればランディングにも時間は掛からず、数をどんどん稼げることに。時折混じる尺ヤマメなどにもご愛敬を振りまきつつ、まさに

 フィッシングマシーン…


本当に良く釣れる安曇野。時にリリースする前に次の1尾が釣れてしまい、この有様。


と化しては、目を血走らせ釣りまくるこのオヤジの暴走を誰も止めることはできない。先ず20尾を釣った所で時計を見れば7時30分。1分1尾のペースであれば申し分なし。その時点でティペットとフライ(次はシャトーリュース)交換。続いて40尾をカウントした所では時計は7時50分。どんなに釣れる場所であっても、突然の沈黙またはペースダウンということはあることを今まで嫌というほど経験してきた小生にとっては、これではまだまだ先の見えない状態。

 不安を感じつつもフライをピンクに変えると、それまでの岩魚天国から一気にニジマス地獄に突入した。アタリの数はそれほど変わらないものの、ニジマスが中心になったと同時に、昨日同様の、バラシの嵐が大発生。フッキングした後、2度3度のヘッドシェィク、さらにそれに続く突進を竿で溜めた途端にバレる。さすがに何度も続けてそれが続くと、ある程度テンションを一下げてやり取りして見るが、それでもやはりバレる。となると釣り上がるペースが、3分間に一尾、とまあ、我が家同様、中年の倦怠期に突入しつつも、フライをすぐに変えようとは思わないのが釣り師心理の不思議。岩魚のクネクネファイトに少々飽きていたせいもあり、先ずはやり取りに集中しつつニジマスのビートの利いたジャンプをしばし堪能。

 

体色はヤマメだが顔はニジマスというなぞ(?)の「ハイブリッド君」と
ペレットではなく藻ばかり食べているという偏食(変色)ニジマス君


 カウンターが60尾になったところで時計を見れば、8時30分。「う~ん、これはギリギリかな…」と考えた所でフライのカラーを昨日の一番好調だったアプリコットに変える。本当なら先行逃げ切りを狙っての早めの投入と考えたが、中盤以降の中だるみを考えて、あえて終盤の勝負に用意しておくというのが、幾星霜半泣きになりつつ歩んできたこのオヤジの知恵袋。伊達に歳ばかり取ってはいないぞ。

 フライチェンジとともに再び岩魚を中心に、ワンキャスト・ワンフィッシュの状態に戻る。「よおし、これで一気に100匹まで全力疾走!」と思った矢先の66匹目に、

 グオン!

という重い重いアタリ。浅いプールの下でギラリと光る魚体はこの期に及んでの60センチオーバー。数釣りを願うなら無理矢理引っ張ってのバラシを願う所なのだろうか、この貧相なひげオヤジの心に中でふっと目を覚ますのが、

 釣り師の魂…

気がつけばドラグに手をやりつつ、ロッドを右に左に溜めに溜めつつ、やったとったのやり取りに無我夢中。水面下にのたうつ巨体に垂涎の眼(まなこ)を注ぐ周囲の釣り客には、

 これ見よがし!

という余裕を見せつつも、バラさぬようにバラさぬように、細心の注意をもってすれば、数分のファイトの後、やっとのことのランディング。口唇の固い所にしっかり掛かったフライがすんなりとは外れぬため、やむなくティペットを切る。そして大奮闘の結果ヘタレ切った鱒が、しっかり動き出すまで、水の中で体を支えてやる。しばらくそうしていると、鱒の方もふっと眠りから覚めたようにビクッと動き出す。「ああれ、俺、こんなとこで何してんだ…?」とでも言うが如く、ゆったりと泳ぎ出す鱒をそっと、水中へと解き放っている自分に深い満足を感じつつも、ふっとあることに気付く。

「しもたぁぁぁああ!こんな事で時間を使っている場合か!」




と自分に激しいツッコミを入れつつも、再びティペットとフライをしっかり交換し、再度、釣りに集中しようとするが、いったん狂ったリズムはなかなか戻らない。そこから70尾までに10分少々を費やすだけに焦りの気持ちだけが先走る。時計はすでに8時50分。「慌てるな、慌てるな…」と自分に言い聞かせつつ、先ずはタバコを一服。缶コーヒーなども購入しつつ、グビリと一息。気分はすっかりジョージア渡哲也となっては、「落ち着け、落ち着くんだぞ、ひげオヤジ。」といつにない低音で自分自身に言い聞かせるも、心の中の声だけに、本当に低音かどうかは誰にも判らない。

 さらにアプリコットのタコを再度結び直し、慌てず騒がず、1匹ずつを丁寧に丁寧に取り込んでいく。そうしてカウンターが、ようやく90になった所で、時計の方を見れば9時15分。ここまで来ればもう100匹への確信はできた。となれば再度、買ってきたコーヒーで喉を湿らせ、今度は黄色いタコに取り替えて、掛けたマスとのやり取りも楽しみつつ釣り上げていく。最後の1尾はやはり、「しっかりキャストして…」と思い、ラインを少し長めに出して、盛んにモジリのある水面目がけてキャスト一閃。逆光で見にくくなたインジケーターが、「あれっ?」という感じで水面下を沈んでいくのを見てからグンとロッドを立てれば、朝一から何度も味わってきたの岩魚の首振りダンスがグリップを通じて掌に響いてくる。さほど大きくない魚体をネットに収めれば無事にこれにて

 
100匹達成!





時計を見れば所要時間は2時間36分。前半戦のスピードを考えれば本当は2時間前後で達成できたかもしれないが、残念ながらそれだけの集中力と体力が今の小生にはない。先ずは3時間69尾(これは今年4月の南郷SCでの記録)を超える自己記録ともなれば、先ず納得の補習授業となった。

 さらに言えば、100尾の釣果に至るまで50尾前後の鱒をバラしてることも事実であり(これは昨日の講習時にも強く感じていた課題)そのヒット率の高さを思えば、まさにここ安曇野FC、間違いなく

 日本一釣れる管釣り!

と言って間違いない。hajihadu公の助言の賜とはいえ、本当によい勉強になった。

 さて、それから少しの間はBFに取り替え、水面上の釣りで楽しむが、昨日同様、「見るが食わない」という状態が続く。それでも何投かに一投はしっかりしたライズもあり(ただどれも小物ばかり)、ゆるゆると30分ほど楽しみ。そして時計は10時半。3時前には滋賀に戻らなければならないため、ここで納竿。ようやく広がり始めた青空の下、銀白に輝く白馬連山を仰ぎながら、澄んだ信州の風を胸一杯に吸い込めば、この一年の労苦からすっと解き放たれたように背筋が伸びる。「よおしこれで来年もがんばれる…」という言葉の後に、「…かな?」というたくさんのたくさんの「?」マークを頭の中に響かせながらも、先ずは良い思い出ばかりを胸に、この安曇野の地を後にした。

2007/12/25

関連記事