12月30日、午前5時45分
久方ぶりに携帯のアラームがかき鳴らす
Entertainner~♪にどやどやと叩き起こされ、先ずはコーヒーメーカーをスイッチオン。手洗いに行き、顔を洗った後、入れ立ての珈琲にほっとしなから、先ずは朝の一服。「うーん、うまい…。」などと暢気に構えている暇などない。慌ただしく着替えを済ませれば、すぐさま車上の人になる。まだ世も明けぬ新名神道路をひた走り、金背トンネルを過ぎれば、空もしっかりと白んでくる。薄青い空に細く雲がなびくの見れば、
よしっ、今日も晴天!
と一つうなずいたまま、今日の目的地。
「なごみの湖」へと向け、車は霜枯れの田園地帯を駆け抜けていく。さて今日が、今年2008年の釣り納め。昨年同様、
08年回顧!なごみの湖年越し蕎麦釣行
なるイベントを京都の
「ま。殿ファミリー」および、奈良の
「な。様」とまぁ、共通点は
「どこもかつてこの国の都であった」という由緒正しき、
京奈滋コネクション!
にて執り行わんとする次第。いつもの坂道を転がるように掛け下り、毎度お馴染みとなった「なごみの湖」の管理棟が目に入るやいなや、あっ!と驚く。
なんと駐車場遙か手前での、大渋滞!
時計を見れば、まだ開業15分前。
「まさか、こんな時間ですでに入場制限か?」と年末休暇で混むとは覚悟していたものの、その不安がさらに倍加したとたん、小生の車に向かって近づいてくる
田中マネの姿。手振りで、「エンジンを切れ」との合図。言われたとおり、エンジンを切り「おはようございます…」と声を掛けようとしたところ。なんと田中マネが見せたのは、
「鉄砲を撃つ」構え。
「えーっ、熊でも出たか、はたまた広域暴力団による管釣りでの縄張り争いか?」などと頭の中には
「仁義なき管釣り・死闘編」などという訳の判らないタイトルが閃きつつも、すぐさま、
ズドォォーーーーン!!
という大きな銃声。2度も続く爆音に、思わず震え上がりつつおれば、なんと4台前の車には今回ご一緒のお約束をした
平城京の
「な。様」のお姿が。朝のご挨拶もそこそこに、
「なんですか、これ?」
と小声でお尋ねすると、なんとライトエリア周辺での害獣一掃のための一コマとのこと。小生の住む
近江京が誇る琵琶湖近辺でも猛威をふるうケダモノ達がこのような所にまで現れて悪さをしているとは、不届き千番、ここはこのひげオヤジが体を張って・・・と思う気持ちはあっても、すでに先ほどの銃声にて腰が半分がた抜け落ちているこのだめだめオヤジには、もちろんそんな明日はないのだ。
さて、何とか作業も終了し、予定の7時半から受け付け開始。
平安京代表の
「ま。殿ファミリー」は少し遅れるということを前夜聞いている。となれば先ずは「な。様」と二人、えっちらおっちら、別名「メタボ退治坂」と呼ばれる坂道を「なごみの湖」目指してヨタヨタヨタヨタ登っていく。
さて一番乗りを決め込んだのは朝一の冷え込みで凍り付いては、足元の滑る
「中央桟橋」。昨年の年越し釣行同様の位置に
「な。様」共々荷物を下ろし、いざタックルをセット。7番フローティングラインでLLの釣りに挑まれるご同僚の姿を横目に、こちらはいつも通りのタコのルースニング。水面下を見れば、何尾かイワナらしい魚影も見える。魚も少しは浮いているかと思えば、浮き下は先ず2メートル。風もない穏やかな湖面に向けて、やややっとキャスト開始。我々に少し遅れてきつつも、先に釣りを始めた下手のルアー師が良形のイワナをさっそくヒットさせているのを横目にしつつ、さっそく・・・
行く2008年を振り返りつつの釣りが始まった。
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先ずはルアー師に負けじとばかり、ラインの巻き癖を取りつつ懸命のキャスト。ようやく15メートルあまりラインを伸ばした所で、インジケーターがクンと沈む。アワセてやればゴクンといつもの手応えとともに、魚は底へ向かって一気呵成に走り出す。リールを使うほどの重さはないものの、そのシャープで俊敏なフットワークは、紛れもなく、お馴染みの
なごみマス
幾度かラインを出しては引っ張りを繰り返しつつ、ようやくネットに納まったのはヒレもぴーんと張ったきれいな魚体。おそらくは昨日、放流されたばかりの40センチ級であろうが、本当にこういうきれいな魚を選んで放流しているここの
田中マネも偉いが、こういう立派な魚をちゃんと育てている養殖業者も偉いもんだと改めて感心する。今年、この国で一番喜ばしかった話題、
ノーベル賞日本人4氏同時受賞!
ということにも重ね、こういうちゃんと仕事をしようという気持ちをもった人たちがこの国に大勢いることを思えば、今がどんなに厳しい時でも、
止まない雨もなく明けない夜もないはず。きっとまたみんなが笑って暮らせる日がきっと来るはずと、先に笑っている自分がいたりするのは申し訳ないことしきり。
さてこれを皮切りに一気に釣れ盛るかと思いきや、そうは銀行は金貸さないのと同様に、問屋が卸さないのが、冬のなごみ。次のアタリが出るまでにはさらに30分あまりを費やしてしまう。「やった、乗った」と喜ぶ小生の横で、なんと
「な。様」にもダブルヒット。馬鹿の一つ覚えのルースニングに精を出す小生を横目に、
「私はあなたとは違うんです。」
とばかりにロングキャストの雨霰、表層から低層までを縦横無尽に攻めまくるその姿こそ、尻をまくってトンズラしたどこかの
元総理大臣に見せてやりたいものと思うのは、間違ってませんよね、
福田さん!
さてそうこうするうちに時計は9時。3本の桟橋から湖岸沿いに据え付けられた固定桟橋まで、まさに
「満員御礼」の釣り場を目指し、
嘉門達夫そっくりの異様なサングラスをした
いかつい親爺を先頭に、ひときわスリムな
ヤングマン、さらに短いロッドをやたら長く見せるてくれる
チビッコFF師という3人組が坂道をのんのんずいずいと降りてくる。
「ちわぁーっす!」
と元気に声を掛けてくるのが、
平安京を根城とする京の雅なFFファミリーこと
「ま。殿ファミリー」ご一行であった。昨年の夏以来のお出会いになる
つきちん師匠は幾分伸びた背丈に加え、頬にニキビの後など残す、まさに一皮むけた高校生ぶりに感心しつつ、日本一のFF小学生こと
りゅうちん君は相も変わらずのチビ助ぶりを見せてくれていることに少し安心。狭い釣り場を譲り合って、先ずはつきちん師匠、りゅうちんのお二人と並んでの釣り開始。
嘉門達夫、もとい「ま。殿」は子供のことなど知ったことかと言わんばかりに、一人固定桟橋で釣り始める。父に置き去りされた子どもたちの姿を見れば、今年、突如現れた、
ホームレス小学生・・・
子どもたちを見捨て、一人で勝手に釣っている無責任オヤジ約1名
となる言葉が脳裏をよぎるが、ここではこのひげオヤジ並びに「な。様」がついているぞ。子どもたち、ご安心召されよ。
上が「りゅうちん君」、下が「つきちん師匠」。ボウズの釣り人が何人もいた中で、まさに大健闘!
さてそれから後もほぼ30分に一度のペースでアタリが出、午前中だけで何とか5尾まで数が伸びる。
チビ助りゅうちん君の竿にも2度のヒットがあるなど、それなりに釣りは進んでいくが、やはりこの寒さ。子どもたちには厳しかろうと「ま。殿」が持ち込んだのが、カセットボンベを利用するアウトドア用ストーブ。さっそく火を入れて暖まろうとするがいくらやっても上手く点火しない。
「こりゃ、返品だわ!」とあきらめた「ま。殿」が去ったその後で、こんどはつきちん師匠があれこれ試しているうちに、
グゥオオオオ!と突然の
大発火。その火を見れば、この夏、お隣、中国で燃えた
北京オリンピック!
の聖火などを思い出すが、今はそんな感慨に耽っている暇はない。慌てふためく子どもたちに向かって、
「早く、元を締めて、元を!」と叫ぶ
「な。様」の声にようやく落ち着きを取り戻したつきちん師匠が、元コックを締めたおかげで、先ずは一安心。かくして、今年中東アジアを震撼させた恐怖の
携帯ガスストーブと格闘する「ま。殿」、この直後、事件は起きた・・・
がここ「なごみの湖」では未然に防がれたこと、先ずは何より喜ばしい限りに思う。
さて、12時を過ぎれば固定桟橋に陣取っていた「ま。殿」もこちら中央桟橋に降りてくる。かくして、ずらり居並ぶ
古都三都、京奈滋コネクション!の輪が完成。まさに
ならぬ
「なごみ湖サミット」の様相と化しつつ、5人並んで釣り続けるが、日が昇るにつれて、こちらのルースニングはウンともスンとも言わない状態に。逆にシンキングラインで底を引く「な。様」の竿に連続ヒット。さらには同じくベタ底をなめるように引いていた「ま。殿」には3連続ヒット。それじゃ、こちらもと思い、シンキングラインに取っ替えて、底べったりを攻めてみるがこちらの竿は相も変わらず一度アタリがあったきりのなしのつぶて。途中、昼飯休憩を挟みながら、
投げちゃ引き、引いちゃ投げを繰り返していれば、まさに海外資金が
引いた後、めったやたらの
投げ売り状態となった
株価大暴落・・・
が脳裏をよぎる。「うーん、いかんなあ」とため息ばかりついていても仕方ない。そうともあの
オバマ次期アメリカ大統領も言っていたはず。
"We can change the old system …"
Yes We Can!!
ということであるならば、さっそく手持ちの
13ftのDHを取り出し、DLS(Deep Loosening System)のセッティング。久方ぶりのダブルハンドに戸惑いつつも、先ずはタナを5メートルにとって、
再チャレンジ!
と意気込むことは、まさに今年一年、遠く信州から関東、さらには管釣りから渓流まで、行くあてもなく釣り場を彷徨するままの
「管釣りホームレス」と化していた小生にとっては当然至極のことならん。
さて、あまりに長いリーダーシステムのため、キャストもままならぬままに、立木際のバンクを流せば、ようやくのこと、モゾモゾというアタリ。スンとロッドを立てれば、久方ぶりの魚の手応え。この剛竿をもってしても負けずにファイトを続ける魚に向かい、
オモロー!ならぬ、
奇声をあげるひげオヤジ約一名(photo by ま。殿)
などという訳の判らない喜びの奇声を挙げるバカはそうは他におりますまい。
そのすぐ後にも同じポイントでもう一尾を追加したの午後3時前。それから後は待てど暮らせど来ぬアタリに、出るのはため息ばかり…となってしまう。「うーん、釣れない」とぼやきつつ時折周囲の眺めてみれば、我々5人も含め、今日すでに30名を越えている釣り人の、なんと全員が、釣れてない!となれば、これこそまさに
古今未曾有(
「こきんみぞうゆう」なんて読んじゃダメですよ、
麻生首相!)の、
世界同時不況・・・
早朝から大混雑の第1桟橋。これだけプレッシャーが掛かれば、やはり厳しい
ということに他ならない。この釣り場に吹き荒れる恐ろしいばかりの不景気風のせいで、
飢えと寒さに苦しむ子供…
まで出てくるようになったら本当にもうまったくもって、おしまいです。
さて4時になったところで、本日はゲームオーバー。営業時間はまだ1時間あまり残すが、小学生も交えたグループなれば、これ以上、寒風の中に立ちすくんでいる訳にも行かない。タックルを片付け、えっちらおっちら事務所に戻れば、当然そこには、
ホッカホカの年越し蕎麦
が待っている。冷え切った体と心にはこれが何よりの楽しみ。年明けに振る舞われるお雑煮もあわせ、こういう心のこもったサービスがあればこそ、本当に「なごむ」ことのできるこの釣り場。田中マネはじめとするスタッフご一同の日頃のご苦心にも思いを馳せつつ、先ずは暖かい蕎麦に心ほぐされる思いがした。
さて蕎麦を啜った後は、
「な。様」、「ま。殿」と3人であれこれ四方山話に花が咲く。
「で、結局、今日はどれだけ釣ったの?」とお二方にお伺いすれば、お二人ともそろいにそろって小生と同じ
「7尾」とのこと。子どもたちが2尾ずつであったことは別として、先ずは大人3人揃っての、
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とはまっこともって、縁起のいい話。これこそ次来る年が、小生のみならず、読者諸兄にとって幸運をもたらす
吉兆ならん…と思いつつ、
先ずは、今年一年の感謝と共に、来年もよろしくよろしくお願い申し上げ候。
2008/12/30